20080623Mon
■COMIC□月刊アフタヌーン■ 百舌谷さん逆上する(1) / 篠房六郎
6月の最後に2008年上半期の漫画界は話題を掻っ攫われる気がします…休刊ラッシュと小学館問題はおいておいて。篠房六郎解釈のツンデレ、真の「ツンデレとはこういうことだっ!!」と病んだ時代に病んだ作品を満を持して送り出していただいたわけです。今年に入ってからアフタヌーンの新連載は全てが当たっているのですが、その中でも出色の出来。何しろインパクトが違います。
主人公の百舌谷小音は通称ツンデレ(正式名称「ヨーゼフ・ツンデレ博士型双極性パーソナリティ障害」)で、好意を持っている場合に攻撃的な言動や行動をとってしまうという症状が出るそうです。この設定がややこしいこと請け合いで、「好意を持っている場合に攻撃的になる」のであって、逆に「好意を持っていない場合に好意的になる」わけではないのです。ややこしい。つまりは、好意的であるないに関わらず攻撃的になってしまうわけです。全てが攻撃的。普通にこの設定を持ってくるとしたら「感情と逆の言動・行動を取ってしまう」というのがストレートな気がするわけですが、そこにあえてこういう設定を持ってきた篠房先生に拍手です。
基本的にはコメディ色の強いシュールな作品なんですが、それだけに留まらないような配慮が設定にあるように思います。人間の感情、とりわけ他人の感情は自分の感情さえ正確に把握できないのですから分かるわけがありません。そこで我々は表情や言動、言葉遣いや声のトーン・強弱、仕草などから他者の感情を読み取ろうとするわけですが、この作品の主人公百舌谷さんは全ての感情に対して同様の行動様式や言動をとってしまう。実際には作品を読んだ方ならわかるでしょうけど、漫画的な記号表現によってですが、好意的なのかそうでないのかは判断できます。それは顔を赤らめていることや、百舌谷さんの心理描写などから読み取れるわけですが、それはこの作品が漫画であり、私達が読者であるからのことであって、登場人物である小学生達にその機微は汲み取れないというのが暗黙の了解になっています。
篠房先生はこの作品によって「人間の感情というものは様々な障害や雑音によって断片的にしか伝わらない」ということと、おそらく最終的には「それでも最後には分かり合えるんだ!」ちというところに持っていくんじゃないかなあと予想しています。まあ、ありがちなところですが、こう設定しておけば斜め上にいってくれたときにより楽しめるかなあとかイヤらしい算段もあったりするわけですが…。漫画を余り読まない方には勧めるに抵抗がありますが、多少オタ成分を含んでいる方になら胸を張ってお勧めしたい良作です。
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